ICT施工のシステムやチルトローテータは、決して安い設備ではありません。
機械本体に加えて、測量機器、ソフトウェア、アタッチメント、取付費用、教育費、維持管理費まで含めれば、投資額は数百万円から、場合によっては数千万円になります。
そのため、導入を検討している会社からは、よくこのような言葉を聞きます。
「仕事が増えるか分からないのに、そんな高い機械は買えない」
「元が取れる保証がない」
「今までのやり方でも仕事はできている」
この不安は、当然だと思います。
しかし、建設業界を長く見ていると、一つの興味深い傾向に気づきます。
それは、ICT施工やチルトローテータのような高額な装置を早くから導入した会社の多くが、厳しい経営環境の中でも生き残っているということです。
もちろん、高額な設備を導入しただけで経営が成功するわけではありません。
設備投資に失敗する会社もありますし、機械を買ったものの十分に活用できず、負担だけが残る場合もあります。
それでも、積極的に新しい技術へ投資し、それを使い続けている会社には、いくつかの共通点があります。
## 高額な機械を買ったから強いのではない
最初に理解しておきたいのは、ICTやチルトローテータを導入したから、その会社が強くなったわけではないということです。
むしろ逆です。
新しい技術を導入し、それを仕事に生かし、投資を回収しようと考える経営姿勢があるからこそ、会社が強くなっていくのだと思います。
高額な設備を導入すると、経営者は否応なく考えます。
「この機械を、どの現場で使うのか」
「従来より、何人減らせるのか」
「工期を何日短縮できるのか」
「どのような仕事なら、他社との差別化ができるのか」
「機械を年間何日稼働させれば、投資を回収できるのか」
つまり、高額な設備投資は、会社に経営の変化を迫ります。
買って終わりではありません。
使い方を考え、営業方法を変え、社員を教育し、現場の施工方法そのものを見直さなければなりません。
この繰り返しが、結果として会社の競争力を高めていきます。
## 生き残っている会社は、価格以外の理由で選ばれている
従来型の施工方法だけで競争を続けると、最終的には価格勝負になりやすくなります。
同じ機械を使い、同じ人数を配置し、同じ日数がかかるのであれば、発注者が比較できるのは金額になってしまうからです。
しかし、ICT施工やチルトローテータを活用すると、提案できる内容が変わります。
たとえば、
・少ない人数で施工できる
・丁張りや手元作業を減らせる
・施工精度を一定に保ちやすい
・狭い場所でも効率よく作業できる
・機械の移動や据え直しを減らせる
・複数のアタッチメントを短時間で交換できる
・安全性の向上が期待できる
・工程を短縮できる
これが、生き残るための大きな要因だと思います。
## 人手不足に耐えられる会社になっている
現在の建設業界では、人手不足が深刻な課題になっています。
若い人が入ってこない。
熟練者が高齢化している。
募集を出しても応募が来ない。
社員が増えないのに、仕事量は減らない。
こうした状況の中で、従来と同じ人数を前提とした施工方法を続けることには限界があります。
ICT施工やチルトローテータを導入している会社は、早い段階から「人が足りなくなる未来」を見据えていた会社ともいえます。
たとえば、これまでオペレーターのほかに、丁張りを確認する人、手元作業をする人、スコップで細かな仕上げをする人が必要だった現場でも、機械化やデジタル化によって必要人数を減らせる可能性があります。
一つの現場で一人減らせるだけでも、その効果は小さくありません。
人件費だけでなく、車両、交通費、保険、安全管理、現場調整など、さまざまな負担が軽減されます。
そして何より、人が採用できない状況でも、仕事を断らずに済む可能性が高まります。
高額な設備は、一見すると経営を圧迫する負担に見えます。
しかし、人手不足が進む時代には、設備を持っていないこと自体が、経営上のリスクになるのかもしれません。
## 機械の価格ではなく、年間で生み出す価値を見ている
新しい機械や装置を見たとき、多くの人は最初に価格を見ます。
「高い」
「そんな金額は払えない」
「今の機械でもできる」
そう考えるのは自然なことです。
しかし、設備投資に積極的な会社は、機械の購入価格だけを見ていません。
その機械が年間でどれだけの価値を生み出すかを見ています。
たとえば、チルトローテータによって一つの現場で作業員を一人減らせる。
工期を一日短縮できる。
これまで外注していた作業を自社施工できる。
特殊な仕事を新たに受注できる。
機械の稼働日数を年間で数十日増やせる。
この効果を積み重ねると、最初は高額に見えた設備の評価が変わってきます。
機械の価格だけを見れば、決して安い投資ではありません。
しかし、その機械でできる仕事を増やし、年間の稼働日数を高めることができれば、投資の意味は変わってきます。
重要なのは、「いくらで買ったか」だけではありません。
「その設備で、年間いくらの利益を生み出せるか」です。
## 新しい技術を導入した会社には、情報が集まる
新しい技術を導入すると、すぐに大きな利益が出るとは限りません。
それでも、他社より早く使い始めることで、さまざまな情報が集まるようになります。
メーカーから新しい相談が来る。
発注者から施工方法について質問される。
同業者から見学や協力の依頼が来る。
展示会や体験会への参加を求められる。
難しい現場の相談が持ち込まれる。
SNSを見た人から問い合わせが来る。
こうした情報は、待っているだけではなかなか集まりません。
実際に機械を保有し、現場で使い、成果や失敗を発信している会社のところに集まってきます。
そして、その情報の中から新しい仕事や新しい事業が生まれます。
設備投資によって得られるのは、作業効率だけではありません。
業界内での認知、信用、相談、協業、人脈といった、数字には表れにくい資産も蓄積されていきます。
## 失敗を早く経験している
新しい技術には、必ず失敗があります。
機械の選定を間違えることもあります。
思ったほど現場で使えないこともあります。
故障や設定不良に悩まされることもあります。
社員が使いこなせず、従来の方法に戻ってしまう場合もあります。
しかし、早く導入した会社は、早く失敗し、早く改善しています。
どの現場に向いているのか。
どの機能は使わないのか。
どの社員に任せるべきなのか。
どのように見積もれば利益が残るのか。
どう説明すれば発注者に価値が伝わるのか。
こうした経験は、お金を払っても簡単には買えません。
時間をかけて現場で蓄積するしかないものです。
他社がこれから導入を検討する段階になったとき、先行した会社にはすでに数年分の経験があります。
機械は同じものを購入できても、経験まで一度に買うことはできません。
この時間差が、大きな競争力になります。
## 本当に危険なのは、高い機械を買うことなのか
設備投資には、当然リスクがあります。
借入金が増えることもあります。
稼働しなければ、減価償却費や返済だけが残ります。
したがって、何でも買えばよいという話ではありません。
しかし、本当に危険なのは、高い機械を買うことだけでしょうか。
人が採用できない。
熟練者が退職する。
施工単価は上がらない。
燃料費や人件費は上がる。
他社が新しい施工方法を身につける。
発注者が省人化やICT活用を求めるようになる。
その中で、何も変えずに従来の方法を続けることにも、大きなリスクがあります。
設備投資をするリスクは数字で見えやすい一方、何もしないリスクは見えにくいものです。
だからこそ、多くの会社は現状維持を選びます。
しかし、業界が大きく変化するとき、現状維持は維持ではなく、相対的な後退になる可能性があります。
## 導入企業が生き残っている本当の理由
ICTやチルトローテータのような高額な装置を導入した会社が生き残っている理由は、単に資金力があったからではないと思います。
新しい技術を使って、
仕事のやり方を変えた。
社員の役割を変えた。
営業の方法を変えた。
価格競争から抜け出そうとした。
人手不足に備えた。
失敗を重ねながら、活用方法を蓄積した。
そして、機械を購入するだけではなく、その機械を使って自社の経営を変えた。
そこに本当の理由があるのではないでしょうか。
高額な設備は、会社を自動的に成功させてくれる魔法の道具ではありません。
しかし、その設備を何としても生かそうと考え、現場と経営を変え続ける会社にとっては、未来を切り開く強力な武器になります。
これからの建設業で問われるのは、機械を持っているかどうかだけではありません。
その機械を使って、どのような価値を生み出せるか。
そして、その価値を発注者や地域、社員にどのように伝えていくか。
設備の金額ではなく、設備を生かす経営力こそが、会社の生存力を決めるのだと思います。

